自己啓発ハラスメントの意味と会社での断り方と守り方ガイド

今回は自己啓発ハラスメントの意味と会社での断り方と守り方について解説します。

・会社から自己啓発の研修やeラーニングを勧められた
・自己啓発を断ったら評価が下がるのではと不安

こうした疑問や思いをお持ちの人はたくさんいます。

一方で自分の仕事や生活とのバランスを考え、無理な自己啓発の強制から距離を取り、必要な学びを上手に選ぶ人もいます。

この違いは自己啓発ハラスメントを知り、問題との線引きや断り方の基本をあらかじめ整理しているかどうかです。

そこで今回は自己啓発ハラスメントの意味、自己啓発の強制が問題になるケースについて解説します。

この動画を見ると自己啓発の時間と労働時間の考え方、現実的な対処法が分かりますので是非最後までご覧ください。

それでは早速、自己啓発ハラスメントとは何を指すのかから見ていきましょう。

自己啓発ハラスメントとは何かを整理する

自己啓発ハラスメントとは、会社や上司が従業員に対して自己啓発を事実上強制することを指します。

これによって断りづらい状況で過度な精神的・経済的負担を与えてしまう状態を指す言葉です。

・この会社にいるなら、この高額セミナーは参加が当たり前
・昇進したいなら、この自己啓発プログラムを受けないと話にならない

こういった圧力が続くと、本人は任意と言われても実質的には拒めません。

こうした状況が長く続くと、自己啓発どころかメンタル不調や人間関係の悪化につながってしまいます。

もちろんすべての会社の自己啓発が、自己啓発ハラスメントになるわけではありません。

業務に必要なスキル研修や希望者を対象にした自己啓発支援制度などは、本来は従業員の成長を支えるための仕組みです。

問題になるのは、行かないと不利益があると感じさせる言動が重なる場合です。

あとは本人の意思や生活状況を無視して、自己啓発を押しつける状態になったときです。

大事なのは自己啓発は本来、本人の意思で選ぶものという前提を忘れないことです。

会社や上司が提案してくる自己啓発プログラムも、情報提供として受け取るようにしましょう。

そして参加するかどうかは自分で決めるという線引きを持っておくと、自己啓発ハラスメントに巻き込まれにくいです。

自分の心や生活にとって無理があると感じたときは、その違和感を押し殺さずにどこからが問題なのかを考えましょう。

会社の自己啓発の強制が問題になるケースと線引き

次に会社による自己啓発の強制が、どんなときに問題になりやすいかを整理しておきましょう。

自己啓発の強制がすべてダメというわけではありません。

ですが業務命令として必要な研修と本来は任意の自己啓発が混ざると、線引きが曖昧になりがちです。

その結果、従業員側は断ったら評価が下がるのでは、ここでNOと言ったら居場所がなくなるのではと感じます。

自己啓発の強制が問題になりやすいのは、例えば次のようなパターンです。

・会社の評価面談で「昇格したければこの自己啓発セミナーに出るのが前提」と繰り返し言われる
・上司から業務時間外に自己啓発プログラムへの参加を何度も迫られる
・断ったときに「やる気がない」「意識が低い」と人格まで否定される

形式上は任意としても、実際には参加しない選択肢が取りづらい状況が続くと、自己啓発の強制に近い状態です。

一方で会社が行うスキル研修やコンプライアンス研修など、仕事に必要な内容を業務時間内に実施するものがあります。

これらは、一般的には自己啓発の強制とは扱われにくいものです。

ここでのポイントは業務として必要なものかどうか、業務時間内かどうか、不参加による不利益が合理的かどうかです。

自分が受けている働きかけが、この三つのどこに当てはまりそうかを一度整理してみましょう。

するとこれは普通の研修か、これは自己啓発の強制に近いのかを客観的に見やすくなります。

自己啓発の時間は労働時間に当たるのかの考え方と判例のポイント

自己啓発ハラスメントを考えるときに外せないのが、自己啓発に使う時間は労働時間と言えるのか?という視点です。

同じ内容のプログラムでも業務命令として行われる研修と任意の自己啓発とでは、労働時間としての判断が変わります。

自己啓発が労働時間か判例で語られているポイントを押さえておくと、会社の説明を聞くときの目安になります。

一般的には労働時間かどうかを判断するときに重視されるのは、会社の指揮命令下にあるかどうかです。

例えば上司からの業務命令として参加必須、参加しないと人事評価や配置で不利益が出る研修があるとします。

これらは自己啓発の労働時間に関する判例でも、労働時間性が認められやすいとされています。

一方で、完全に希望者のみを対象とした自主参加の自己啓発講座があるとします。

こうした参加しなくても評価に影響がない場合は、労働時間とは見なされにくくなります。

ここで注意したいのが、形式上は任意だが実際には強制に近いケースです。

・一応自由参加だけど、課長以上は全員出ている
・参加しないのはやる気がないと見なされる

こうした雰囲気がある場合、本人としては自由に選べない状態に陥ってします。

このようなグレーな状況では、自己判断だけで抱え込まず労働基準監督署や社内の相談窓口などに相談しましょう。

「こういう自己啓発があるが、労働時間として扱われるのか」と相談してみることが、身を守る一歩になります。

自己啓発ハラスメントから自分を守るための具体的な対処ステップ

実際に自己啓発ハラスメントかもしれないと感じたとき、どのように自分を守ればよいのでしょうか。

いきなり会社と戦う必要はなく、まずは自分の状況を整理してできる範囲でリスクを減らすことから始めましょう。

自己啓発ハラスメントを疑ったときのステップを、できるだけ現実的な順番でまとめてみます。

第一に事実を記録することです。

いつ、誰から、どのような自己啓発の強制や発言があったのかをメモやメールで残しておきます。

・○月○日 上司Aから業務時間外の自己啓発セミナーへの参加を求められた
・断ると評価に響くと言われた

このように感情ではなく、事実ベースで書き残しておきましょう。

これは、あとから第三者に相談するときの重要な材料になります。

第二に自分の希望と限界を言葉にしておくことです。

・業務時間内の研修なら参加したいが、業務時間外の高額な自己啓発セミナーは難しい
・家庭の事情や健康状態もあり、週末に長時間のプログラムに参加する余裕がない

こうして自分の事情をシンプルな文章にまとめておくと、上司に伝えるときも落ち着いて話しやすくなります。

第三に一人で抱え込まず、社内外の相談窓口に順番に相談することです。

社内であれば人事部門やハラスメント相談窓口、労働組合があればそちらも候補になります。

社外であれば労働基準監督署や自治体の労働相談窓口、法テラスなどが挙げられます。

自己啓発ハラスメントかどうかの線引きも含め、一緒に考えてもらえる人に相談しましょう。

「この状況はおかしいのか」「どう対応すべきか」を相談すれば、感情だけで判断せずに済みます。

会社の自己啓発制度と上手に付き合うための現実的な距離感

最後に自己啓発ハラスメントを避けつつ、会社の自己啓発制度を上手に使うための距離感について整理しておきます。

自己啓発そのものは、本来は自分の成長やキャリアのための大切な手段です。

ハラスメントが怖いから自己啓発は全部やらない、と極端になる必要はありません。

会社の自己啓発は自分に合う範囲で選んで使うというスタンスが取れると、一番バランスがよくなります。

具体的には次のような線引きを一つの目安にしてみてください。

業務に必要な研修や法令遵守に関する教育は、基本的には仕事の一部として受ける。

一方で高額な自己啓発セミナーや、業務と直接関係が薄い自己啓発プログラムについては次の基準で判断する。

・自分のキャリアや生活にとって本当に必要か
・費用や時間の負担に無理がないか

また会社の自己啓発にどこまで乗るかを決めると同時に、会社の外で自分に合う自己啓発の場を持つのも一つの選択肢です。

・図書館で本を借りる
・気になるオンライン講座を自分のペースで受けてみる
・家で静かにノートを書いて振り返る

このように会社の外にも自己啓発の手段はいくらでもあります。

自己啓発ハラスメントを避ける意味でも、成長のための場を会社に一本化しないことは自分を守る大事な工夫になります。

編集後記

会社の自己啓発って「会社が言うことだから従わないといけない気がする」と感じやすいですよね。

相談を受けていても「本当は行きたくないけど、断ったら居づらくなりそうで怖い」という声は本当に多いです。

私も昔は会社から紹介された講座やセミナーは全部前向きに受けるべきだと思い込んでいました。

しかし後から「正直これは今の自分にはいらなかったな」と感じたことが何度もありました。

そこから学んだのは、会社が用意してくれる自己啓発は候補の一つに過ぎないという視点です。

もし自己啓発ハラスメントかもしれないと感じているなら、一度ノートに書き出してみてください。

・これは本当に今の自分に必要か
・断るとしたらどう言うか

その一歩が自分の生活と心を守りながら、必要な自己啓発だけを選び取る力につながっていきます。

まとめ
  • 自己啓発ハラスメントは自己啓発の強制で心身に負担が出る状態を指す
  • 自己啓発の強制が労働時間や評価に影響する場合は記録と相談で自分を守る
  • 自己啓発ハラスメントを避けるには会社の自己啓発制度との距離感と自分の軸を決めておく