【思考は現実化する】解説|願望が硬い壁を打ち破る|ナポレオン・ヒルの成功哲学

今回の「思考は現実化する」の解説内容は、一人の耳の不自由な少年と、その父親の努力に関する実話です。

父親は、我が子の生まれた状況に悲観することなく、自分の願望を強固なものへとして、その運命に立ち向かいました。

それによって、結果的に我が子は社会的にも成功し、自分と同じ環境の人たちにも貢献することに繋がります。

今回のエピソードでは、前後半に分けて、彼らの生い立ちから見ていく実話です。

・私は恵まれた環境にない
・成功できない理由がたくさんある

こうした悩みを抱えている人にとっては、自分を奮起させるきっかけになるかもしれません。

今回のエピソードでは

・強固な願望が現状を打ち破る
・素直になって必要なものを取り入れる重要性

これらについて学ぶことができます。

それでは早速、この親子のエピソードについて、ナポレオン・ヒルの成功哲学に20年従事している専門家が、ひとつひとつ詳しく解説していきます。

願望が堅い壁を打ち破る

私が、初めて彼と出会ったのは、彼が生まれて数分後のことでした。

この赤ん坊には、耳がありませんでした。

医者は「一生、耳と言葉は不自由のままでしょう」と言いました。

ですが、私はこの医者の診断を信じませんでした。

信じない権利が、私にはあると思ったからです。

なぜなら、私がその子の父親であったからです。

私は、心の中で息子(二男)が必ず聴覚を取り戻し、話せるようになる、と確信していました。

必ず、その方法があるはずだと思っていました。

なぜ、そう私が確信したのか、合理的な説明はつきませんが、私は何とかして、その方法を見つけ出そうと思っていました。

そのとき、私はエマーソンの言葉を思い浮かべていました。

『自然の法則は、私たちに為すべきことを教えてくれる。

ただ、素直に従うことだ。

人には、それぞれの方法で生きる手立てがある。

耳を澄ませて静かに聞けば、正しい法則があなたにも聞こえてくるだろう』

そして、その「正しい法則」こそが願望なのです。

私は、息子ブレイアが決して耳の聞こえない人間ではない、ということを強い願望として頭に刻み込みました。

私のこの願望は、その後一度として、私の中から消えたことはありませんでした。

私は、心の中でブレイアが回復する、と確信していたのです。

ブレイアは、絶対に耳が聞こえるようになるのだ、と毎日、繰り返し自分に言い聞かせました。

少し大きくなるにつれて、ブレイアにはほんの僅かとはいえ、その表情の動きによって、聴力があることが分かりました。

しかし私には、とりあえずそれで十分でした。

もし、少しでも聞き取ることが可能であるのなら、その力を伸ばすことができるに違いない、と考えたからです。

こうして、予想もしなかったことから、希望の光が見えてきたのでした。

ここまでで学ぶこと

ブレイアの父親には、これ以上となるものは何もない程の願望が在りました。

その願望と正面から向き合い、考え続けることで、遂には願望実現のヒントを得ることに成功します。

私はよく、自己啓発に取り組む人へ「現在、病に冒されているのであれば、自己啓発の前に病院です。自己啓発で病が治ることは難しいからです」と言っています。

自己啓発で病気が回復した、治ったという経験をお持ちの人もいらっしゃいますが、それを私の立場で安易に発言することは、あらぬ誤解を呼びますのでしません。

病を治すのは病院であることに違いはないのですが、病と生きていく上で、本人が現状を克服するために、その周囲にとっても、自己啓発はとても役に立つものです。

そして、成功の観点から見ると、ブレイアの父親には根拠がないのに、どうして願望が確信を得るレベルにまで達したのか、と疑問に思われる人もいることでしょう。

その答えは非常にシンプルで、願望の源となるものが、愛の中で最上級に値するアガペーであったことです。

アガペーとは、神学における概念で、無償の愛を意味します。

分かりやすく表現するなら、親が子に与える愛、あるいは家族に対する愛などです。

人は、願望に対して根拠を持つことで確信へと変わり、確信によって、願望を全ての物事よりも最優先にすることで、成功へと近づいていきます。

ブレイアの父親も、アガペーによって、瞬時にこれと同じ状態になることができたのです。

注意して頂きたいのは、現在、目標や願望から確信を持てずに悩んでいる人が、この話を参考にして、自分の目標や願望を、家族へ当てて確信を得ようとすることです。

なぜ、それが問題なのかと言うと「考えた上で出てきた内容」と「既にそこに在る内容」は、全くの別物だからです。

考えてみて下さい。

親が子に与える無償の愛というものは「考えた上で出てきた内容」ではありませんよね。

「既にそこに在る」存在に対して、無条件で無意識に与えているものです。

目標や願望を、家族に対して向けることが問題ではなく、それで確信を得ることもできますが、確信を得るためにそうしてみる、というのは順序が逆なのです。

それでは続いて、その後のブレイアと父親について見ていきましょう。

一生を変えた出来事

私が、蓄音機を買って帰ってきた日のことでした。

生まれて初めて音楽を聞いて、ブレイアはとても興奮し、音がすっかり気に入ったように見えました。

その後、二時間以上も蓄音機の端を噛むような姿勢をして、彼はレコードを聞いていたのです。

ブレイアのこの姿勢は、大変重要な意味を持っていたのですが、骨伝導という現象を聞いたことがなかったので、私は何年もその意味が分かりませんでした。

ブレイアが蓄音機に飽きた頃、私は、彼の頭骨の斜め下方にある、少し尖った骨の部分に唇を当てて話してみました。

そうすると、よく聞こえているらしいことが分かりました。

こうして、私の声が彼に聞こえていることが分かったので、私は直ちに、彼に「聞きたい、喋りたい」という願望を、持たせようと考えました。

それから間もなくのこと、私はブレイアが寝る前に、物語を聞くのが好きなことを発見しました。

そこで私は、彼に「聞こえるようになりたい」という強い願望を抱かせるような話を作って、夜毎に聞かせることにしました。

話す度に飽きがこないよう、新しい脚色を加えつつ、その物語を繰り返し聞かせたのです。

このようにして、彼が背負っているハンディキャップは、負い目でも何でもなく、大きな価値を持つ、一つの財産であることを、彼の心に植えつけたかったのです。

どんなハンディキャップも、それに匹敵するだけの利点を持っているのだ、とする考え方を、これまで私は実践し、広めることに努めてきました。

しかし当時は正直なところ、ブレイアのハンディキャップが、一体どうやって財産に転化するのか、全く見当もつきませんでした。

今、当時の経験を振り返ってみると、息子の私に対する信頼が、驚くべき成果に結びついたように思います。

なぜなら、私が教えることに対して、彼は疑うということをしなかったからです。

彼は、教えに対してとても素直だったのです。

私は、そのハンディキャップにも関わらず、彼が兄より有利なものを持っているのだ、と教え込みました。

そして、その利点が、いずれ多くの面で現れるだろうとも語りました。

一例を挙げれば、学校の先生は、彼に聴覚がないことを知れば、特に彼に注意を払い、親切に扱うであろう、などといったことです。

また、アルバイトで新聞売りができる年頃になれば(その時、彼の兄は既に新聞売りのアルバイトをしていた) 兄よりも有利な立場になるであろう、と教えました。

新聞売りの少年が、耳が無いにも関わらず、一所懸命に仕事をしているのを見れば、励ましのために、より多くのチップをくれるに違いない、と考えたからです。

事実、その通りでした。

そして七歳頃になると、私の教えが有効であったことが、だんだんと判明してきました。

もっとも数カ月にわたって、ブレイアは新聞を売りたいと言い続けましたが、母親はなかなかそれを許しませんでした。

そこでとうとう、ブレイアは自分で道を切り開く決意をしました。

ある日の午後、我が家の使用人たちが気を許している隙に、彼は台所の窓から抜け出して、表に出るのに成功しました。

そして、近所の靴屋から六セントを借り、新聞を卸してもらって、すぐに売り払い、その売上でもっと多くの新聞を買う、ということを夕方まで繰り返し行ったのです。

結果的に、借りた6セントを耳をそろえて返してもなお、42セントの儲けがありました。

その夜、私が帰宅すると、彼はそのお金をしっかりと握ったまま、眠っていました。

母親は彼の手を広げ、そこに握られていた硬貨を見て泣き出しましたが、逆に私はブレイアの最初の成功を見て、心から喜びました。

というのは、私の教えたことによって、ブレイアに自信が芽生えたことを知ったからです。

母親は、耳の不自由な少年が、哀れにも命がけで、お金を稼いだという見方をしていました。

しかしブレイアは、私の目には勇敢で自立した、小さな実業家として映ったのです。

自分自身でやってのけたために、余計にその価値は大きいものがありました。

このことで、彼は彼自身の一生に役立つものを得た、という感触が私にはあったのです。

ここまでで学ぶこと

蓄音機を買ってきたり、ハンディキャップを克服する考え方を実践し、広めることに努めてきた人、というあたりで、勘の良い人は気付いたかもしれません。

そうです、この父親は他の誰でもない、ナポレオン・ヒル本人です。

今回の実話は、ナポレオン・ヒル本人と、その実子であるブレイア・ヒルのエピソードです。

「思考は現実化する」ではブレイアとされていますが、現代ではブレア・ヒルとされています。

父親の諦めない姿勢によって、ブレイアは医者の宣告とは逆に、聴覚も言葉も使いこなしながら、生活を送ることに成功しました。

ハンディがあることには変わりありませんが、しかしそれを克服して、現状に負けない心構えを身につけ、同年代の少年には到底無理なことを成し遂げたのです。

そしてさらに、ブレイアはこの後、人生において社会でも成功し、更には同じハンディに悩む人達にも貢献することになるのですが、これは次回に解説していきます。

こうしたブレイアの心構えは、父親の絶え間ない努力による、ブレイアを支える積極的心構えを構築するための、在り方を説いて反復させたこと以外にありません。

なぜなら、ブレイアには通常の外界の音は、完全とは言わないまでも、遮断されており、それ以外には特に吸収するものがなかったからです。

つまり、見方によっては、ブレイアは非常に恵まれていた環境だったとも言えます。

一般の人であれば、外界から入ってくる、あらゆるネガティブな情報によって、潜在意識に雑草の種を植え付けられるのですが、それが彼にはありませんでした。

ですので、常に彼は素直な心で受け入れることができ、さらには常に整地がされている状態の潜在意識に、父親から在り方を反復して刷り込まれていました。

それもこれも、全ては父親の強固な願望によって、作り上げられたものです。

私達も、この二人を見習って強固な願望を持ち、そして素直な心で、必要なものを取り入れれば、現状を乗り越え、成功を手にすることができます。

どんな環境や現状にあったとしても、成功を志すことは可能です。

そのために必要なものを取り入れ、不要なものを取り除き、成功へと進んでいきましょう。